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第7話 知らぬ間に採用されていた件(前編)

🦉 むかしむかし、森を追われた一羽のフクロウがいました。

かつて森で皆を見守っていたフクロウでしたが、
「あなたはもう必要ない」と言われ、静かに森を去ることになりました。

空を彷徨うフクロウがたどり着いたのは、
石と鉄でできた塔が立ち並ぶ、人間たちの都。
喧騒と光に満ちたこの場所に、フクロウの休める枝はなかなか見つかりません。

そんなある日、都の片隅にひっそりと存在する「小さな国」に出会います。
そこには、まだ砦も旗も整わぬ若い王がいました。
王は熱に浮かされたような瞳で、フクロウを見つめて言いました。

「我が国はこれから、この都に城を築く。
そして新たな秩序を、この混沌に打ち立てるのだ。
だが我には知恵が足りぬ。お主の目で都を見て、風を読み、助言をしてはくれぬか?」

フクロウは王の言葉に少し驚きました。
これまでの森では安心を与えることが使命だった。
だがこの王は、安心ではなく野心のために助けを求めてきたのです。

「都の風は、森とは違うぞ」

若き王はにやりと言いました。

フクロウは、再び羽を広げました。
小さな森を離れたフクロウと、都に夢を見た若き王。
ふたりの奇妙な同盟が、こうして始まったのです。

鉄と光と欲望の渦巻く世界で――。

🏢 東京ベンチャー戦記:その門を叩いた日

私の名前は川内崇浩。
転職エージェントの斡旋を受けながら、転職活動を続けている――しがない男だ。

いくつかの打診を受ける中で、ある日、奇妙な案件が舞い込んだ。

「東京のベンチャー企業がグループホームを立ち上げるらしいです」
「まだこれからですが、話だけでも聞いてみませんか?」

ベンチャー? 株式会社? 新宿?
どれも自分には縁遠い世界だ。
しかも対象は精神障害者。苦手意識も強く、あまり乗り気にはなれなかった。

でも「話だけでも」という軽さに流され、承諾した。

……だが、騙された。


🎭 面談のはずが、気づけば面接

数日後、エージェントから連絡が入る。

「すみません💦社長も是非お会いしたいと……」

うん? まぁ熱意があるのはいいことだ。

「あと……すみません💦念のため履歴書だけご用意を……」

おい、待て。
話だけじゃなかったのかよ。
だが断るほどの理由もなく、履歴書を用意して当日を迎えた。


🚪その扉の先には“異世界”があった

出迎えたのは、ギラついた社長と、デキる雰囲気の人事担当の女性。

場違い感、ハンパない。

社長は高学歴・元外資系の経歴。
普段なら絶対交わることのない人種。まさに異世界転生。

経歴や志望動機を尋ねられたが――正直、どうでもよかった。

開き直った私は、
「この制度を活かせば利益率が…」「空き室の回転率を上げるには…」
と、福祉の収益構造や用語解説を延々語り始める。

まるでプレゼンだ。

隣で顔面蒼白のエージェント。
そりゃそうだ。これは面接ではなかったはずだ。

……ところが、社長は食い気味で応じてきた。

「なるほど、B型との連携は…? 自社サービスとシナジーがあるね」
「補助金の仕組み、詳しく教えてよ」

会話は盛り上がり、気づけば1時間以上。
もはやビジネス会議。

そして、社長が言った。

「家族に、いい暮らしさせてあげなよ。一緒に事業を大きくしよう」

人事も笑顔で、

「もう結果はお分かりかと思いますが、後ほどご連絡しますね」

帰り道、エージェントがホッとした顔で言った。

「いやー、ヒヤヒヤしましたけど……いい結果になりそうですね」

……そりゃそうだろ。
こっちは面接を受ける気、そもそもなかったんだから。


💼 結果:採用、そして「破格」

後日、採用通知が届いた。
提示された条件を見て――目を疑った。

高給。

これが株式会社の力か……。

私は入社を決めた。
福祉とベンチャーの融合。
未知の世界に、両足を踏み入れた。

ここから、経験値がさらに加速していくことになる