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第8話 知らぬ間に採用されていた件(後編)

🪶昔々のお話:森を出たフクロウの旅路

森を去ったフクロウは、長い旅の末、とある「塔の町」に辿り着きました。
そこは森とはまるで違う世界――すべてが速く、光がまぶしく、人々は常に何かを生み出していました。

塔の一つに住む若き王は、森の話を聞いてこう言いました。

「なるほど。お前の知恵は、役に立ちそうだ。だがこの塔では、ただの知恵じゃ足りん。俺たちは未来を創るんだ」

そうしてフクロウは、その王のもとで、再び羽ばたくことになったのです。

株式会社で働いた男の記録

私の名前は川内崇浩。
東京・新宿のベンチャー企業で働く、40歳の男だ。

この会社の母体は不動産業。初めてのオフィス勤務。しかも新宿駅すぐそばの高層ビル群。
それだけでも、今までの福祉人生とはまるで別世界だった。

とにかく、社内の人間すべてが「初めて出会うタイプ」。
エネルギッシュで、頭の回転が速くて、話がスピード感で飛んでいく。
正直、最初は圧倒されっぱなしだった。

でも――面白かった。

マーケティング?営業?
今まで一切関わったことのない世界。でも、それが新鮮で、刺激的で、楽しくてたまらなかった。

「やばい、株式会社って……楽しい」

社会福祉法人しか知らなかった自分にとって、ここでの毎日はまるで新しい言語を覚えるような日々。
時には叱られることもあったけれど、それ以上に学べることの方が多かった。

福祉用語の“通訳”としての自分の価値も見えてきた。
専門用語を分かりやすく翻訳するたび、「わかりやすい」「もっと教えて」と言われた。
そして驚くべきは、みんなの理解の早さ。一つ話せば十返ってくる。
その応答が、また楽しくて仕方がなかった。

📄申請業務と、都庁デビュー
初めて都庁へ行った。あまりの大きさに唖然とした。
3か月でグループホームの申請書類をまとめるというタイトなスケジュール。
でも、前職の経験が役立ち、何とか乗り切れた。

物件やら設備面やらは会社側が手際よく動いてくれ、分業体制も見事。
「この人たち福祉初めてだよね?」と思うくらい、理解も吸収力もすごかった。

そして無事、認可が下りた。

🏠“おしゃれなグループホーム”という価値観
その物件は、元々インバウンド向けのウィークリーマンションだった。
それをGHへと転用するプランだったのだけど……中はおしゃれで清潔感も抜群。

社長がこう言った。

「障害のある人にも、ちゃんといい暮らしをしてもらいたいよね。
 正直、福祉っぽいのって……なんかダサいじゃん?」

――なんかダサいじゃん?

その言葉が、不思議と心に刺さった。これは今でも残っている。

🧾営業も請求も、一人で駆け抜けた日々
認可後の営業活動も地獄のようだったが、どこか楽しかった。
処遇改善加算の申請は、ほぼ単独でやりきった。死ぬかと思った(笑)
請求業務も覚え始め、福祉事業の“お金の流れ”を体感していった。

📢「Ghは投機じゃない!」都の集団指導で…
ある日、都が主催する集団指導へ。

開口一番、都の担当者が声を張り上げた。

「最近、株式会社がGHに参入していますが――
 投機目的でやるものではありません!
 あくまで利用者さんのためにやるべきなんです!」

……いきなり火力マックス。


不動産を活用し、物件オーナーと事業法人を分ける――
福祉の世界ではまだ馴染みの薄い、でも他業界では普通のスキーム。

決して悪いことをしているわけじゃない。
だけど「福祉っぽくない」ことに対する抵抗感。それが、この世界にはまだ根強いんだと思った。

🏢都庁での面談、そして“熱”が伝播する
二棟目の申請時。都の担当者と直接面談することに。
質問が的確すぎて、ついこちらも嬉しくなり――
気づけば1時間以上、福祉の未来について二人で語り合っていた。

横にいた上司はぽかーん。明らかに退屈そうだった(笑)
でもその後、
「川内さん、都の担当者にめちゃくちゃ気に入られてましたよ」
と上機嫌で伝えてくれた。

📍そして――
ここで一つ、転機が訪れる。
独立を決意することになる、決定的な出来事だった。