私の名前は川内崇浩
コンディションが非常に悪いなか緊急案件を複数件対応中の満身創痍の支援員だ
ただ今月は過去最高収入となるのでそれはそれで達成感がある
さて、今夜肩慣らしにこんな話を書いてみようと思う。
ちむ夜話 第一夜 消えた支援者F
この業界には、得体の知れない人間が職員として紛れ込むことがある。
福祉は人を支える場所であると同時に、働く場を失った者が身を寄せる場でもあるからだ。
Fという支援者も、そのひとりだった。
彼は一人の利用者に取り憑かれたように肩入れをした。
差し入れから始まり、映画や食事へと連れ出し、やがて「わが子にしたい」とまで口にした。
周囲が止めようとすればするほど、Fは声を荒らげた。
「どうして分からないんだ。あの人は俺を必要としている。
お前らが冷たいだけだ。だから福祉は底辺なんだ。」
利用者の心にも亀裂が走った。
「Fさんはしてくれるのに、他の支援者は何もしてくれない」
不満は広がり、支援の輪はじわじわと崩れていった。
だが、私たちの仕事は魚を与えることではない。
釣る術を共に学ぶことだ。
そのことをFは、どうしても理解できなかった。
やがて上司が静かに告げた。
「それは越えてはならない一線だ」
その言葉にFは怒り狂った。
「俺は元官僚だ。法律のプロだ。お前らなど足元にも及ばない」
彼は突然、奇妙な経歴を語り始め、条文を唱えるように並べ、己の正しさを証明しようとした。
それは本当の記憶か、それとも虚勢か。はたまた願望か・・・
誰にも確かめようはなかった。
その後、Fはふっと姿を消した。
だが夜になると――。
遠くの闇から、今もなお「俺は正しい、俺は選ばれた」とぶつぶつ繰り返す声が聞こえるという。
それを耳にした支援者は皆、口を閉ざし、二度とその話をしなくなる。
この話が事実かどうかは分からない。
ただひとつ言えるのは――福祉の現場にも、人知を超えた怪異が棲んでいるということだ。
―― 出典:福祉怪奇譚 奇々怪々
いかがだっただろうか、誰の心の中にもFは住んでいる。
今夜、貴方の耳にFの声が聞こえるかもしれない・・・
それでは今夜はこの辺で。
お休みの間悪魔に体を乗っ取られぬようお気をつけて・・・・
