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相談支援事業所を設立してみよう①

私の名前は川内崇浩。
加算に関する資格の応募が二つとも通って、小躍りしている中年男性だ。
今夜は会社の設立について触れていきたいと思う。

この業界を始めるにあたり、法人格が必要なのは以前も触れた通り。
今回は、てっとり早く法人格が得られる「合同会社」について話していく。


合同会社の魅力

なんといっても設立費用が安い。そして一人で作れる。これに尽きる。
もちろん、資金調達面では株式のように株を発行できないため融資が受けにくく、上場もできないというデメリットはある。
だが、小規模でやるならそこまで気にしなくてもいいだろう。
今後さらに規模を大きくするなら、その時に株式へ移行すればいい。

NPOや一般社団法人という選択肢もあるが、私に大きな影響を与えた社長の
「福祉っぽいのって、なんかダサいじゃん?」
この一言に感銘を受け、そちらは検討していない。
興味があるなら調べてみてもいいだろう。

決算公告が不要なのも合同会社のありがたい点だ。


設立書類は代行がおすすめ

設立に必要な書類作成は…正直、代行業者に頼むのが賢明だ。
私も実際に利用している。だいたい10万円もあればおつりがくる。
ネットで検索し、口コミを確認しながら選べば大きな失敗はないはずだ。

ここで「定款」というワードが出てくる。
事業目的をここに記載するのだが、文言を間違えると大変だ。
必ず役所に確認すること。訂正には法務局への申請が必要で、手数料が最低3万円。
代行に頼むと10万円はかかる。

私のおすすめは「障害者計画相談」と「障害児計画相談」を同時に入れること。
私は後から障害児計画相談を追加し、二度手間になった経験がある。

創業時は信頼ゼロからのスタート。えり好みしている余裕はあまりない。


資本金と創業融資

資本金は100万円用意できるのが理想だ。
なぜなら融資の審査で有利になり、資金繰りも安定しやすいからだ。

資金調達については、私は自己資本100%でやったので利用していないが、創業融資制度(日本政策金融公庫など)を活用する方法もある。
無担保・無保証での融資枠もあり、自己資金が少ない場合は検討の余地があるだろう。

私の場合、本当に初めは信用も知名度もなく、半年で得た収入は3万円程度だった。
安定した収入が入るまでは最低でも1年はかかると覚悟しておいた方がいい。


口座開設の現実

まず、みずほや住友などのメガバンクは難しいと思っていい。
地方銀行でも苦戦するはずだ。
狙うべきは信用金庫かネット銀行。特にSBIはおすすめだ。
資本金1万円でも口座が作れたので、100万円あれば余裕だろう。


次のステップ

法人格を取得したら、川崎市の障害者施設指導課に電話し、面談のアポを取る。
そこから書類作成がスタートだ。
順番は電話が先でもいいが、法人格を先に取っておくと動きがスムーズ。
もちろん同時進行でも構わない。

面談では、なぜ設立したいのかを色々と聞かれる。
よほどの失敗をしなければ問題はないだろう。


では次回、「書類作成編」でお会いしよう。
今夜はこの辺で…。

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最終話 母が遺した場所

フクロウの最後のねぐら

むかしむかし、
ひとつの森を去ったフクロウがいました。

かつて多くの動物たちに「安心」を届けていたそのフクロウは、
いつしか「おまえはわかっていない」と言われ、
森を追われるようにして空へ飛び立ったのです。

次にフクロウが降り立ったのは、
森でも谷でもない、ちいさな丘のふもとでした。

そこには王様がひとりきりで住んでいました。
まだ若く、小さな国を治めるその王様は、
知識を求め、経験を欲し、未来を渇望していました。

「ようこそ、旅の者。
 私はこの場所を、誰よりも優しく、そして強くしたいのだ」
フクロウの目を見て、王様は言いました。

フクロウは少し戸惑いながらも答えました。
「この羽は、もう誰かを守るには古すぎるかもしれませんよ」

けれど王様は笑って言いました。
「ならば私が、飛び方を学ぶ番だね。どうか一緒にいてくれ」

こうしてフクロウは、丘のふもとで新たな日々を過ごしました。
王様と共に語り合い、知恵を伝え、
時には都に赴き、風を読み、空の色を教えました。

——しかし、季節はまた巡ります。

ある日、フクロウの心にぽっかりと穴が空きました。
とても大切だった、ひとつの命が、風になったのです。

けれど、その時フクロウは思い出しました。

「誰かのために、何かを築くこと。
 それこそが、わたしが今もここにいる意味ではないか」

そして、丘のふもとに、新たな場所をつくる決意をしました。
それは、自分が羽ばたいた証を残す場所。
そして、愛する者と“これからも共に生きていく”場所。

フクロウは、目を細めて空を見上げました。

「ここが最後のねぐらになるだろう。
 だけど、それは終わりではなく、始まりなんだ」

——それが「母が遺した場所」の、ほんとうの始まりでした。

🌿 そして、母と生きる

これが最後の話になる。

ここで――人生の針が、大きく動く出来事があった。

それは、母の病だった。
末期がんと診断され、余命は長くないと告げられた。

仕事は順調だった。
経験も、収入も、やりがいも手に入れつつあった。
でも、その知らせは――すべてを吹き飛ばすほどの衝撃だった。

最後の時間を、ただ見守ることしかできなかった。

あれほど飽きるまで食べたあのうどんはもう食べられない。嬉しいことがあっても報告が出来ない。子供の頃から今に至るまで些細な事でも嬉しそうにうなずいてくれる母はもういない・・・・。

母が亡くなったあと、ぽっかりと穴が開いたような日々が続いた。
しかし、ある日ふと思った。

「母の遺したものを使って、福祉の事業を立ち上げよう。
 そうすれば、これからもずっと一緒にいられる気がする」

それは、悲しみからの逃避ではなかった。
“母とのつながりを、人生に刻みたい”という強い願いだった。

自分の手で立ち上げる福祉の場所に、
母の生きた証が流れていく――そう思えたとき、迷いは消えた。

私は、独立を決意した。

社長は快く送り出してくれた。
社内ベンチャーという話もあったけれど、
私は自分の足で立ちたかった。
それは、師匠から受け継いだ精神と、ベンチャー企業で培ったスピリットの融合だった。

そして――原動力は、ただ一つ。

「母と生きる」こと。

若いころ、私は父を亡くし、母と兄と三人で暮らしてきた。
母には、孫の顔も見せることができた。
PTA会長になったときも、喜んでくれた。

母は、強い人だった。
若いころ、結婚を反対され父と駆け落ちしたこともあったらしい――母の死後、叔父から聞いた話だ。
生活を支えるため、平日は会社で働き、土日はパート。
引退してからは、孫の世話をよくしてくれた。

それでも、どこか天然だった。

うまい棒を「うまか棒」と言い、
シャンメリーを「メリーシャン」と言ったり。
何かにつけて、言い間違いが多かった。

そんな母が、私は大好きだった。

これまでの経験のおかげで、書類申請や事業所の開設は造作もないことであった。
……まぁ、前の記事に書いたように、ちょっとした失敗はあったけど(笑)

そして――今に至る。

思ったより長くなってしまったけれど、これが独立までの軌跡だ。
次回からは、またいつものブログに戻ろうと思う。

長い話に最後まで付き合ってくれて、感謝しかない。

それでは今夜はこの辺で。

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第8話 知らぬ間に採用されていた件(後編)

🪶昔々のお話:森を出たフクロウの旅路

森を去ったフクロウは、長い旅の末、とある「塔の町」に辿り着きました。
そこは森とはまるで違う世界――すべてが速く、光がまぶしく、人々は常に何かを生み出していました。

塔の一つに住む若き王は、森の話を聞いてこう言いました。

「なるほど。お前の知恵は、役に立ちそうだ。だがこの塔では、ただの知恵じゃ足りん。俺たちは未来を創るんだ」

そうしてフクロウは、その王のもとで、再び羽ばたくことになったのです。

株式会社で働いた男の記録

私の名前は川内崇浩。
東京・新宿のベンチャー企業で働く、40歳の男だ。

この会社の母体は不動産業。初めてのオフィス勤務。しかも新宿駅すぐそばの高層ビル群。
それだけでも、今までの福祉人生とはまるで別世界だった。

とにかく、社内の人間すべてが「初めて出会うタイプ」。
エネルギッシュで、頭の回転が速くて、話がスピード感で飛んでいく。
正直、最初は圧倒されっぱなしだった。

でも――面白かった。

マーケティング?営業?
今まで一切関わったことのない世界。でも、それが新鮮で、刺激的で、楽しくてたまらなかった。

「やばい、株式会社って……楽しい」

社会福祉法人しか知らなかった自分にとって、ここでの毎日はまるで新しい言語を覚えるような日々。
時には叱られることもあったけれど、それ以上に学べることの方が多かった。

福祉用語の“通訳”としての自分の価値も見えてきた。
専門用語を分かりやすく翻訳するたび、「わかりやすい」「もっと教えて」と言われた。
そして驚くべきは、みんなの理解の早さ。一つ話せば十返ってくる。
その応答が、また楽しくて仕方がなかった。

📄申請業務と、都庁デビュー
初めて都庁へ行った。あまりの大きさに唖然とした。
3か月でグループホームの申請書類をまとめるというタイトなスケジュール。
でも、前職の経験が役立ち、何とか乗り切れた。

物件やら設備面やらは会社側が手際よく動いてくれ、分業体制も見事。
「この人たち福祉初めてだよね?」と思うくらい、理解も吸収力もすごかった。

そして無事、認可が下りた。

🏠“おしゃれなグループホーム”という価値観
その物件は、元々インバウンド向けのウィークリーマンションだった。
それをGHへと転用するプランだったのだけど……中はおしゃれで清潔感も抜群。

社長がこう言った。

「障害のある人にも、ちゃんといい暮らしをしてもらいたいよね。
 正直、福祉っぽいのって……なんかダサいじゃん?」

――なんかダサいじゃん?

その言葉が、不思議と心に刺さった。これは今でも残っている。

🧾営業も請求も、一人で駆け抜けた日々
認可後の営業活動も地獄のようだったが、どこか楽しかった。
処遇改善加算の申請は、ほぼ単独でやりきった。死ぬかと思った(笑)
請求業務も覚え始め、福祉事業の“お金の流れ”を体感していった。

📢「Ghは投機じゃない!」都の集団指導で…
ある日、都が主催する集団指導へ。

開口一番、都の担当者が声を張り上げた。

「最近、株式会社がGHに参入していますが――
 投機目的でやるものではありません!
 あくまで利用者さんのためにやるべきなんです!」

……いきなり火力マックス。


不動産を活用し、物件オーナーと事業法人を分ける――
福祉の世界ではまだ馴染みの薄い、でも他業界では普通のスキーム。

決して悪いことをしているわけじゃない。
だけど「福祉っぽくない」ことに対する抵抗感。それが、この世界にはまだ根強いんだと思った。

🏢都庁での面談、そして“熱”が伝播する
二棟目の申請時。都の担当者と直接面談することに。
質問が的確すぎて、ついこちらも嬉しくなり――
気づけば1時間以上、福祉の未来について二人で語り合っていた。

横にいた上司はぽかーん。明らかに退屈そうだった(笑)
でもその後、
「川内さん、都の担当者にめちゃくちゃ気に入られてましたよ」
と上機嫌で伝えてくれた。

📍そして――
ここで一つ、転機が訪れる。
独立を決意することになる、決定的な出来事だった。

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第7話 知らぬ間に採用されていた件(前編)

🦉 むかしむかし、森を追われた一羽のフクロウがいました。

かつて森で皆を見守っていたフクロウでしたが、
「あなたはもう必要ない」と言われ、静かに森を去ることになりました。

空を彷徨うフクロウがたどり着いたのは、
石と鉄でできた塔が立ち並ぶ、人間たちの都。
喧騒と光に満ちたこの場所に、フクロウの休める枝はなかなか見つかりません。

そんなある日、都の片隅にひっそりと存在する「小さな国」に出会います。
そこには、まだ砦も旗も整わぬ若い王がいました。
王は熱に浮かされたような瞳で、フクロウを見つめて言いました。

「我が国はこれから、この都に城を築く。
そして新たな秩序を、この混沌に打ち立てるのだ。
だが我には知恵が足りぬ。お主の目で都を見て、風を読み、助言をしてはくれぬか?」

フクロウは王の言葉に少し驚きました。
これまでの森では安心を与えることが使命だった。
だがこの王は、安心ではなく野心のために助けを求めてきたのです。

「都の風は、森とは違うぞ」

若き王はにやりと言いました。

フクロウは、再び羽を広げました。
小さな森を離れたフクロウと、都に夢を見た若き王。
ふたりの奇妙な同盟が、こうして始まったのです。

鉄と光と欲望の渦巻く世界で――。

🏢 東京ベンチャー戦記:その門を叩いた日

私の名前は川内崇浩。
転職エージェントの斡旋を受けながら、転職活動を続けている――しがない男だ。

いくつかの打診を受ける中で、ある日、奇妙な案件が舞い込んだ。

「東京のベンチャー企業がグループホームを立ち上げるらしいです」
「まだこれからですが、話だけでも聞いてみませんか?」

ベンチャー? 株式会社? 新宿?
どれも自分には縁遠い世界だ。
しかも対象は精神障害者。苦手意識も強く、あまり乗り気にはなれなかった。

でも「話だけでも」という軽さに流され、承諾した。

……だが、騙された。


🎭 面談のはずが、気づけば面接

数日後、エージェントから連絡が入る。

「すみません💦社長も是非お会いしたいと……」

うん? まぁ熱意があるのはいいことだ。

「あと……すみません💦念のため履歴書だけご用意を……」

おい、待て。
話だけじゃなかったのかよ。
だが断るほどの理由もなく、履歴書を用意して当日を迎えた。


🚪その扉の先には“異世界”があった

出迎えたのは、ギラついた社長と、デキる雰囲気の人事担当の女性。

場違い感、ハンパない。

社長は高学歴・元外資系の経歴。
普段なら絶対交わることのない人種。まさに異世界転生。

経歴や志望動機を尋ねられたが――正直、どうでもよかった。

開き直った私は、
「この制度を活かせば利益率が…」「空き室の回転率を上げるには…」
と、福祉の収益構造や用語解説を延々語り始める。

まるでプレゼンだ。

隣で顔面蒼白のエージェント。
そりゃそうだ。これは面接ではなかったはずだ。

……ところが、社長は食い気味で応じてきた。

「なるほど、B型との連携は…? 自社サービスとシナジーがあるね」
「補助金の仕組み、詳しく教えてよ」

会話は盛り上がり、気づけば1時間以上。
もはやビジネス会議。

そして、社長が言った。

「家族に、いい暮らしさせてあげなよ。一緒に事業を大きくしよう」

人事も笑顔で、

「もう結果はお分かりかと思いますが、後ほどご連絡しますね」

帰り道、エージェントがホッとした顔で言った。

「いやー、ヒヤヒヤしましたけど……いい結果になりそうですね」

……そりゃそうだろ。
こっちは面接を受ける気、そもそもなかったんだから。


💼 結果:採用、そして「破格」

後日、採用通知が届いた。
提示された条件を見て――目を疑った。

高給。

これが株式会社の力か……。

私は入社を決めた。
福祉とベンチャーの融合。
未知の世界に、両足を踏み入れた。

ここから、経験値がさらに加速していくことになる