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最終話 母が遺した場所

フクロウの最後のねぐら

むかしむかし、
ひとつの森を去ったフクロウがいました。

かつて多くの動物たちに「安心」を届けていたそのフクロウは、
いつしか「おまえはわかっていない」と言われ、
森を追われるようにして空へ飛び立ったのです。

次にフクロウが降り立ったのは、
森でも谷でもない、ちいさな丘のふもとでした。

そこには王様がひとりきりで住んでいました。
まだ若く、小さな国を治めるその王様は、
知識を求め、経験を欲し、未来を渇望していました。

「ようこそ、旅の者。
 私はこの場所を、誰よりも優しく、そして強くしたいのだ」
フクロウの目を見て、王様は言いました。

フクロウは少し戸惑いながらも答えました。
「この羽は、もう誰かを守るには古すぎるかもしれませんよ」

けれど王様は笑って言いました。
「ならば私が、飛び方を学ぶ番だね。どうか一緒にいてくれ」

こうしてフクロウは、丘のふもとで新たな日々を過ごしました。
王様と共に語り合い、知恵を伝え、
時には都に赴き、風を読み、空の色を教えました。

——しかし、季節はまた巡ります。

ある日、フクロウの心にぽっかりと穴が空きました。
とても大切だった、ひとつの命が、風になったのです。

けれど、その時フクロウは思い出しました。

「誰かのために、何かを築くこと。
 それこそが、わたしが今もここにいる意味ではないか」

そして、丘のふもとに、新たな場所をつくる決意をしました。
それは、自分が羽ばたいた証を残す場所。
そして、愛する者と“これからも共に生きていく”場所。

フクロウは、目を細めて空を見上げました。

「ここが最後のねぐらになるだろう。
 だけど、それは終わりではなく、始まりなんだ」

——それが「母が遺した場所」の、ほんとうの始まりでした。

🌿 そして、母と生きる

これが最後の話になる。

ここで――人生の針が、大きく動く出来事があった。

それは、母の病だった。
末期がんと診断され、余命は長くないと告げられた。

仕事は順調だった。
経験も、収入も、やりがいも手に入れつつあった。
でも、その知らせは――すべてを吹き飛ばすほどの衝撃だった。

最後の時間を、ただ見守ることしかできなかった。

あれほど飽きるまで食べたあのうどんはもう食べられない。嬉しいことがあっても報告が出来ない。子供の頃から今に至るまで些細な事でも嬉しそうにうなずいてくれる母はもういない・・・・。

母が亡くなったあと、ぽっかりと穴が開いたような日々が続いた。
しかし、ある日ふと思った。

「母の遺したものを使って、福祉の事業を立ち上げよう。
 そうすれば、これからもずっと一緒にいられる気がする」

それは、悲しみからの逃避ではなかった。
“母とのつながりを、人生に刻みたい”という強い願いだった。

自分の手で立ち上げる福祉の場所に、
母の生きた証が流れていく――そう思えたとき、迷いは消えた。

私は、独立を決意した。

社長は快く送り出してくれた。
社内ベンチャーという話もあったけれど、
私は自分の足で立ちたかった。
それは、師匠から受け継いだ精神と、ベンチャー企業で培ったスピリットの融合だった。

そして――原動力は、ただ一つ。

「母と生きる」こと。

若いころ、私は父を亡くし、母と兄と三人で暮らしてきた。
母には、孫の顔も見せることができた。
PTA会長になったときも、喜んでくれた。

母は、強い人だった。
若いころ、結婚を反対され父と駆け落ちしたこともあったらしい――母の死後、叔父から聞いた話だ。
生活を支えるため、平日は会社で働き、土日はパート。
引退してからは、孫の世話をよくしてくれた。

それでも、どこか天然だった。

うまい棒を「うまか棒」と言い、
シャンメリーを「メリーシャン」と言ったり。
何かにつけて、言い間違いが多かった。

そんな母が、私は大好きだった。

これまでの経験のおかげで、書類申請や事業所の開設は造作もないことであった。
……まぁ、前の記事に書いたように、ちょっとした失敗はあったけど(笑)

そして――今に至る。

思ったより長くなってしまったけれど、これが独立までの軌跡だ。
次回からは、またいつものブログに戻ろうと思う。

長い話に最後まで付き合ってくれて、感謝しかない。

それでは今夜はこの辺で。