私の名前は川内崇浩。
以前、このブログで「職員図鑑」という、何の役に立つのかよく分からない記事を書いた。
そして最後には、
「次回予告:職員図鑑 Vol.2 妖精さん・森の魔女・請求の魔導士 編(近日公開予定)」
とまで書いてある。
……そして月日は流れた。
近日とは何だったのだろうか。
ということで、誰も待っていなかったであろう「職員図鑑 Vol.2」。
今さらながら開幕である。
ちなみに予告に登場した「森の魔女」と「請求の魔導士」。
よく考えたら同じ人だった。
そのため今回は、新たに「倭人」を加えてお送りしたい。
🧚 No.5 妖精さん
どこの職場にも時々現れる、可愛い系担当の女性職員。
明るく、優しく、愛嬌がある。
その魅力は利用者さんだけにとどまらず、男性職員まで魅了する。
妖精さんが出勤すると、なぜか職場の空気が少し明るくなる。
普段は無口な男性利用者さんがよく喋る。
普段は腰の重い男性職員が、なぜか率先して動く。
「俺、送迎行きますよ」
……さっきまで嫌がってませんでした?
恐るべし、妖精さんのバフ効果。
しかし、妖精さんにも成長ルートが存在する。
数々の修羅場を経験し、支援力と判断力、そして時には厳しさまで身につけると――
「ハイエルフ」へと進化する。
優しさと厳しさを兼ね備え、利用者さんからも職員からも信頼されるパーフェクト超人。
管理者としては、ぜひともハイエルフまで育ってほしい。
……のだが。
大体その前に寿退社する。
そして管理者は静かにつぶやく。
「……ハイエルフまで育てたかったなぁ」
妖精さんの育成難易度は、意外と高い。
🧙♀️ No.6 森の魔女
福祉の森の奥深くに生息する、請求担当の女性事務員。
眼鏡とカーディガンが正装。
普段は静かに森の奥で暮らしているが、その正体は事業所の命運を握る強大な魔女である。
国保連請求はもちろん、各種加算にも精通。
現場職員には到底理解できない古代魔法、
「常勤換算」
「算定要件」
「返戻」
などを自在に操る。
知を求める者が森を訪れると、時として貴重な加算の知識を授けてくれる。
「あの……この加算って取れますか?」
機嫌が良ければ、
「それなら〇〇を整えれば取れるよ」
と、ありがたい神託を授けてくれる。
しかし、機嫌が悪い日に訪れてはいけない。
特に――
月末に魔女へ話しかけることは、死を意味する。
何も知らない若者が森へ入り、
「すみませーん。この前の領収書なんですけどー」
などと話しかけようものなら、
魔女はゆっくりと眼鏡の奥からこちらを見る。
その瞬間、すべてを悟る。
……今日は帰ろう。
熟練した職員になると、遠くからでも魔女の機嫌を察知できるようになる。
カーディガンを羽織り、無言でパソコンを叩いている。
机の上には大量の書類。
――森に入ってはいけない日である。
福祉事業所が今日も無事に運営できているのは、我々の知らないところで魔女が魔法を使っているからなのかもしれない。
決して怒らせてはいけない。
特に月末は。
🌸 No.7 倭人
福祉の現場に時折現れる、異様に「和」を愛する職員。
小物に和柄。
財布も和柄。
携帯の待ち受けも、桜、富士山、月夜、竹林――。
なんだかよく分からないが、とにかく和っぽい。
そして、その情熱は仕事にも容赦なく持ち込まれる。
自主製品にまで和の要素を取り入れ始める。
「これ、和柄にしたら良くないですか?」
市場調査?
ターゲット層?
顧客ニーズ?
知らん。和が大事だ。
気がつけば、事業所の自主製品に桜、麻の葉、青海波などが増殖していく。
本人は満足そうである。
休憩時間に飲むお茶は、もちろん伊右衛門。
なぜか綾鷹ではない。
伊右衛門なのである。
そんな倭人にも弱点がある。
飽きる。
あれほど愛していた和柄の小物が、ある日を境に少しずつ姿を消していく。
携帯の待ち受けも変わる。
自主製品の新作にも和柄が登場しなくなる。
そして数か月後――
まるで何事もなかったかのように、普通の職員へ戻っている。
しかし安心してはいけない。
何かのきっかけで再び桜柄の小物を手にした瞬間、
倭人の血が目を覚ます可能性がある。
ちなみに私も一時期、和柄が大好きでした。
伊右衛門も好きでした。
……はい、私です。
福祉の現場には、今日もいろんな職員がいる。
妖精さんが場を明るくし、
森の魔女が請求を守り、
倭人が頼まれてもいないのに和柄を持ち込む。
得意なことも、苦手なことも、妙なこだわりも人それぞれ。
そんな人たちが集まって、今日も福祉の現場はなんとなく回っている。
そして、この職員図鑑を書きながら改めて思った。
職員を分類して遊んでいる私自身が、
たぶん一番変な職員だったのかもしれない。
……ということで、職員図鑑 Vol.2。
今度こそ無事完結。
Vol.3があるかどうかは――
知らん。
その時の気分が大事だ。
